元ロシア駐在員による楽しく身につくロシア語オンライン講座

クチナシの花と僕のおばあちゃん

2020/06/20
 
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根畑陽一(Yoichi Nebata)
1987年石川県生まれ、金沢市在住。神戸大学経営学部卒。 新卒で三井物産株式会社に入社し、約9年半勤務。会社の語学研修制度で、ロシアのオムスク(シベリア)でロシア語を習得。ロシア・ウクライナに合計4年駐在し、主に日系自動車のビジネスに従事。 退職後、民間レベルでの日露交流をもっと深めたいとの思いから、ネバタロシア語オンラインスクールを立ち上げる。 TOEIC920点、ロシア語検定テ・エル・カイ第3レベル(C1レベル)。 趣味は旅行、読書、ストリートダンス。学生時代、ロサンゼルスにて1年弱の語学兼ダンス留学を経験。自身のYouTubeチャンネルでロシア動画を配信中。

今、自宅の庭ではクチナシの花が満開です。クチナシとは梅雨の時期(6-7月)に花が咲く常緑低木。白くて綺麗な花を咲かせ、とても芳しい香りを漂わせることから、香水の原料としても利用され、沈丁花(ジンチョウゲ)、キンモクセイと並んで三大香木に1つに数えられています。ジャスミンに似た香りがすることもあり、英語ではCape Jasminと呼ばれています。

クチナシの名前の由来は、実が熟しても裂けないことから来ているといわれています。実が裂けないことで、「実に口がない」というところから「クチナシ」と名付けられたというのが一般的な説です。 

花言葉は「とても幸せです」「喜びを運ぶ」「優雅」。欧米ではダンスパーティーで女性を誘う時に、男性がクチナシの花を渡していました。「優雅」な香りの花を渡した男性も、女性も「とても幸せ」な気持ちになることから、このような花言葉がつきました。

我が家の庭で満開に花咲くクチナシ

今、僕は実家の金沢で両親と祖母と4人で暮らしています。

朝ごはんを食べている時のことです。今年に米寿(88歳)を迎えた祖母はクチナシの花を見て、「あの花はなんやったけ?忘れてしもた」とつぶやいていました。物忘れがかなり進んでおり、母から一度聞いた「クチナシ」という単語がなかなか出てきません。

かくいう僕もなかなか思い出せず、「確か四文字やったはず!」「イから始まる名前じゃないかな?イチョウじゃないか?」とかデタラメなことを言いながら、祖母と頑張って思い出そうとしていました。

ふとしたタイミングで思い出し、「分かった、クチナシや!」と僕が言うと、祖母も「そうやったそうやった!クチナシや!」と言って記憶を取り戻しました。

その次の日の朝、祖母の記憶力を確かめてみようと思い、僕はあえて「おばあちゃん!あの白い花は何て名前やったっけ?」と聞いてみました。すると案の定、祖母は「何やったけなー?忘れてしもたわ!笑」と全然思い出せません。

「クチナシね!クチナシ!覚えた?」と僕がリマインドします。祖母は「おーそうやったそうやった!クチナシや!すぐ忘れてしまうわ」と笑いながら言いました。

すると祖母は「それにしてもなんでクチナシって言うんやろか?」とつぶやきました。僕はその場ですぐにググり、「花についている実が裂けないから、口が無くてクチナシって言うみたいね」と答えました。祖母は「なるほどねぇ」とうなづきます。

さらに祖母は「昔、『くちなしの花』っていう歌があったなぁ」とつぶやきます。これまた、すかさずYouTube検索すると、1973年にリリースされた渡哲也のヒット曲であることが分かります。当然、僕は知りませんでした。

YouTubeに渡哲也が石原裕次郎と「くちなしの花」のコンサート映像があったので、スマホで再生し、祖母と一緒に鑑賞しました。その動画がこちらです。3分くらいから曲が始まります。歌だけでなく、冒頭のトークシーンからも古き良き昭和の香りが漂います。

これを見ながら祖母は「おー懐かしいなぁ。石原裕次郎も死んでしもたなぁ。」とか言いながら、この曲を嬉しそうに口ずさんで歌っています。実は歌が好きなのね、おばあちゃん。

テレビで育ち、朝から晩までテレビだけを見ている祖母にとって、スマホでYouTubeを見るのは初めてのことです。「くちなしの花という歌があった」とつぶやいただけで、僕がちょこっと指を動かし、YouTube動画を見ることで一瞬で50年前にタイムスリップしたような感覚を味わったのです。「便利なもんがあるんやなぁ」としきりに関心していました。僕自身も祖母が生きた時代「昭和」を追体験したような感覚がありました。

祖母は「陽一は普段何をやっとるんや?」と聞いてきたので(何回か説明しました笑)、YouTubeのロシア語での自己紹介動画を見せました。これも驚きと関心した様子で見ていました。ロシア語で歌って踊る動画については、腹を抱えて笑っていました。「最後にお辞儀までしとる。傑作や!笑」と涙目です。祖母を少しでも笑顔にできたことで嬉しい気持ちになりました。

僕からは「オンラインでロシア語を教えていて、生徒は金沢ではなく、日本やロシアに散らばっていること」「YouTubeと広告収入の仕組み(僕は何ももらってませんが)があって、子供達の憧れの職業でYouTuberというものがある」「今の子供たちはテレビは見ずに、YouTubeで自分が見たいものを見る時代」ということを説明しました。

「YouTubeで何か見たいものある?」と聞くと、祖母は「いや、わからんわ。無い」と答えます。当然のことです。今まで何も考えずに、受動的にテレビから流れる映像を見ていたのだから、「自分が見たいものを見る」ということに慣れていません。

そこで、僕が思いついて、ドリフターズの「ズンドコ節」と美空ひばりの「川の流れのように」の動画を流しました。祖母は「懐かしいなぁー!」って言いながら、楽しみながら見て、嬉しそうに歌を歌っていました。

祖母は週2でデイサービスに通っていますが、それ以外は基本的に自宅で食べるか、テレビを見るか、寝るかしかありません。体力と記憶力が随分と衰えてきたのはこの生活習慣のせいもあると思います。

明日は祖母の記憶力チェックをしたいと思いますが、きっとクチナシの花を見れば、「口が無いからクチナシ」「渡徹夜が歌っていたくちなしの花」ということを前よりは思い出せるのではないかと思います。それまでは単なるカタカナ4文字の羅列「クチナシ」でしかありませんでした。

記憶というのは何かと関連させることによって強くなると言われています。ロシア語も全く同じで、単語1つ1つとにらめっこして丸暗記してもなかなか覚えられません。類義語も合わせて関連づけて覚えたり、その言葉を使った例文フレーズとその使うである場面(映像)を想像することで、記憶が定着しやすくなります。また、言葉からイメージが連想されるようになることで、自分から発した時には「生きた言葉」になっていきます。

また、今回の「くちなしの花」は一つのキッカケです。「なんでクチナシって名前なのか?」「くちなしの花ってあったなぁ」とつぶやくだけだとそこで止まってしまいます。気になったことはすぐに調べる、自分が好きだと感じること、笑顔になれるものに自分から積極的に触れていくという習慣を持つことはとても大切なことだと感じました。そうしていれば何歳になっても人生を楽しめるのではないかと思います。

今度は祖母が何をつぶやくのかが楽しみです。


追記 :
翌朝、祖母の記憶を確認してみましたがやっぱり覚えてませんでした!笑
そんな簡単に物忘れが治ったら苦労しないということですね。1回では覚えられないということかもしれません。

よくよく考えてみると、僕もロシア語やスペイン語の新たな単語を覚えるのに、少なくとも5-6回は口に出したりして反復しないと、とっさに出てくるレベルにはなりません。

改めて記憶のコツについて整理します!

関連付け×反復練習=長期記憶

これが間違いなく大事ですね。
ということで祖母には毎日クチナシの話をしていく必要があるかもしれません。


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根畑陽一(Yoichi Nebata)
1987年石川県生まれ、金沢市在住。神戸大学経営学部卒。 新卒で三井物産株式会社に入社し、約9年半勤務。会社の語学研修制度で、ロシアのオムスク(シベリア)でロシア語を習得。ロシア・ウクライナに合計4年駐在し、主に日系自動車のビジネスに従事。 退職後、民間レベルでの日露交流をもっと深めたいとの思いから、ネバタロシア語オンラインスクールを立ち上げる。 TOEIC920点、ロシア語検定テ・エル・カイ第3レベル(C1レベル)。 趣味は旅行、読書、ストリートダンス。学生時代、ロサンゼルスにて1年弱の語学兼ダンス留学を経験。自身のYouTubeチャンネルでロシア動画を配信中。

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